VRoid HubにVRMをアップロードすると、VRMファイル内のライセンスが書き換わる問題

結論

  • VRoidHubは、投稿されたVRMファイルについて、作者に説明不足な状態でライセンスを書き換え、自社URL(hub.vroid.com)を埋め込んで配布している。現状作者のライセンスを維持してVRoid Hub上でVRMを配布する方法はない。
  • 元々設定してあったOtherLicenseURLが消され、VRoid HubのURLに上書きされるのは気持ちが悪い。
  • VRoid Hubは、VRMと条文互換性がない独自ライセンス/利用条件を作っている。
  • 先にサービスを展開して、こっそり独自仕様を忍ばせるのはスマートとは言えない。VRM規格を変更するのであれば、VRMコンソーシアム等での適切な議論の上で変更してほしい。

 

実際にVRoidHubにVRMをアップロードしてみる

自作のVRMファイルをVRoid Hubへアップロードして公開してみよう。OtherLicenseURLも記入して…、こんなライセンスのVRMファイルを作ってみる。

f:id:o_mega:20190201011253p:plain

これをVRoid Hubへアップロードする。

f:id:o_mega:20190201032241p:plain

「モデルデータの利用条件を確認しよう」と誘導されるので、それに従う。

f:id:o_mega:20190202032035p:plain

「他の人の利用」を「OK」に設定しないと、DL可能な状態にできないと言われたので、「OK」を設定してみる。

f:id:o_mega:20190202031856p:plain

利用条件というのはVRMのライセンスとは異なるのか?疑問があるが「登録して公開」する。これでDL可能になった。

f:id:o_mega:20190202035945p:plain

さて、「このモデルを利用する」からVRMをダウンロードして、UniVRMで見てみる

f:id:o_mega:20190201012916p:plain

え?何このURL?自分の設定したURLはどこ?どうしてVRoid HubのURLが入ってるの?

 

あなたがVRMモデル作者で、DL可能状態でVRoid Hubへアップロードしているなら、ぜひ自分のVRMファイルをDLしなおして、VRMファイル内のOtherLicenseURLを確認して見てほしい。ここではUniVRM(0.44)で確認を行ったが、他のVRM対応アプリケーションでも同じように確認できると思う。hub.vroid~から始まるURLが見つけられるはずだ。

 

どうしてライセンスURLが書き換わるのか?

FAQを探るとそれらしい記述は見つけられた

VRoid Hubの利用条件とVRMライセンスについて – VRoid ヘルプ

「その他のライセンス条件(Other License Url)」について

商用利用についての詳細や、クリエイティブ・コモンズから変更した部分を補うために、「その他のライセンス条件(Other License Url)」については、利用条件を記載したURLが設定されます。

 

なお、こちらの記事でも述べているように、すでにライセンスが設定されているVRMファイルをVRoid Hubにアップロードした場合、そのモデルデータにある元のライセンスが反映されたVRoid Hubの利用条件が設定されます。

https://vroid.pixiv.help/hc/ja/articles/360014960454

VRoid Hubにアップロード後に、ご自身で利用条件を変更しない限り、元のライセンスが異なる条件に変更されることはありません。

(2019/2/2時点)

 「ご自身で利用条件を変更しない限り(中略)変更されません」とは書いてあるものの、変更せずにDL可能状態にはできない。いくつかのVRMファイルで確認したところ、VRoid Hubで配布されるVRMファイルはライセンスが上書き改変されたと思える状態になっていた。

つまり、VRoid Hubには作者がもともと設定したライセンスを維持して「DL可能な状態」にする方法がない。FAQには続けて下記の記述があるが、これは実際の挙動とは異なる説明だろう

 

なお、この説明FAQへのリンクや誘導は変更フローからは存在せず、上で試したような普通の作業フローで気づくのは難しいと思える。

VRMライセンス内容の引き継ぎと変更について

VRoid HubにアップロードしたVRMファイルは、元のライセンスデータをそのまま保持しています(※1)。タイトルやバージョン等の一般情報(メタ情報、Information)も引き継いでいるので、VRoid HubからダウンロードしたVRMファイルをUniVRM等で確認すると、元のライセンスデータが確認できます(※2)。

VRoid Hubでは、VRMのライセンスデータを「利用条件」として、互換性を維持したまま、より分かりやすく表示しています。

(2019/2/2時点)

上で試したように、VRMモデル作者の設定したOtherLicenseURLは上書きされ失われている。引き継げていない。

 

 

もう少しFAQを見ていく

VRoid Hubと、UniVRMや連携サービス上でのライセンスが異なるのですが – VRoid ヘルプ

VRoid Hubと、UniVRMや連携サービス上でのライセンスが異なるのですが

 

▼VRoid Hubに登録したモデルデータと連携サービス先で表示されるライセンスについて

 

VRoid Hubで登録したモデルデータを連携サービス上で読み込んだ際、VRoid Hubの利用条件と連携サービス上で表示されるライセンスが異なるライセンスのように見えてしまうケースがあります。

(2019/2/1時点)

「UniVRMでのライセンスが異なる」とUniVRMでのライセンス表示が適切にできなくなっている、つまり互換性が失われていることを把握しているようだ。他の規格互換ツールならともかく、標準実装であるUniVRMと表示が異なっている状況を見て、互換性があると明記しているのはなかなか不可解だ。互換性はファイルが読めるだけではなく、ライセンス条文も同一でなければ困る。

 

念のため、他のいくつかのVRM対応アプリケーション、VワールドVRM Live ViewerVirtualMotionCaptureHitogataVRMを開いてみて、VRoidHubと同様の利用条件表示ができているものはなかった。なぜこのようなVRoidHubでしか使われてないライセンス/利用条件を作って、そしてVRoid Hubユーザに適用させようとしているのか。

 

仮に、もしライセンスを変更/拡張するのであれば、本来例外的なライセンスを記入するOtherLicenseURL欄を多用するべきではないとだろう。
それこそ、他のライセンス項目同様に(例えば暴力表現や性的表現、商用許諾のように)VRM規格側へ取り込むべきといえる。ライセンス規格が乱立するのはVRMモデル作者としてもVRMユーザとしてもVRMアプリ開発者としても手間が増える。もともとのVRMのコンセプト、ポータビリティを高める目的にも反する。
こういった、現状分裂を引き起こしているライセンス/利用条件を、VRoid Hub内で配布する全VRMファイルに、説明不足な状態で上書きして使わせようとしているpixivの姿勢には疑問を感じる
 
VRMコンソーシアムにはpixivも参加してるのだから、ぜひそちらで議論してVRM規格を統一してほしい。
 

余談

余談だが、VRoidStudio(0.5.3-win)は特に問題なくVRM規格に準拠したライセンスでVRMファイルを出力している。

今回の確認にはVRoidStudioで作成したVRMおよびUniVRM(0.44)を使用した。