ヨーヨーを3Dプリンタで自作する(1)

はじめのポエム

ヨーヨー復帰、バインド挑戦

夏にハイパーヨーヨーアクセルの発売を知ったところから、リワインドのトリック動画へ吸い込まれ、そしてバインドヨーヨーへずぶずぶと吸い込まれた。

そう、自分もハイパーヨーヨー第一期世代。当時は、ファイヤーボールやステルスレイダーを天井や顔にぶつけていた少年だった

 

沼ったのはリワインドの動画であるような1A向けのバインド仕様、海外ではunresponsive yoyoと言われるタイプ。で、当然のように、新品ヨーヨーやら中古ヨーヨーやらをリワインドやネストやらで買い漁り、ゆっくりながらトリックを練習したりしていた

 

ヨーヨーは楽しい

どうやらヨーヨーは面白いかというと難しい。スッと味わえる楽しさではないが、シューティングゲームの「斑鳩」をやっていた時のような手触り、楽しさがあるように思う

斑鳩はゴールへの道筋がわりとハッキリしているが、頭ではわかっても手が追いつかず、トレースできない。毎日ちまちまと遊ぶと段々と手が道筋を覚え、動きをトレースできるようになり、そして一連のプレイがきれいに繋がると達成感がある。頭で考えなくても手が勝手に動き、画面の自機と弾と敵が思い描いたように移動し、攻撃し、爆発する。「手癖が自分に定着していく」感触が良い

ヨーヨーもトリックの手順はハッキリしているが、やはり見ただけでは手がついていかない。ちまちま遊ぶと段々理解したり、突然ひらめきを得たりして、手と身体が覚えていく。段々手が勝手にトリックをキメられるようになり、スムーズに動くようになる。そこへ来ると楽しさが滲み出てくる。ゲームと違って、紐に指を通すだけですぐ遊べるのもいい。ゲームと違ってヨーヨーのセッティングや摩耗に左右されたり、ちょっと場所は使うけども…*1

 

競技向けの狭さと様々なヨーヨー欲

そんなわけで色々ヨーヨー、特にリワインドが推す競技ヨーヨー方面で楽しんでいたのだが、

…ヨーヨーはめちゃくちゃ数があるのに、違いがわからない

 

ヨーヨーレビューもそれなりにあるけども、見てもよくわからない。いや、これはなんか近しい記憶があるぞ。そうだ、ロードバイクレビューだ。あれも、文学とかポエムとか言われてしまっていたが、うーん、いやそれは仕方がないのかも…

スペック差が明確にあり、性能差がそのまま使い勝手に影響するものならさておき、特に競技向けは目的が明確な分、どうしても性能は似たより寄ったりになる。価格で差がつくものはさておき、それ以上は性能以外の部分、使い勝手やデザインや色で語るしかなくなってしまう。そしてヨーヨーはそこの余地がそんなに広くないように見える*2

その点ではC3ヨーヨーデザインは数を打ちつつカラーやアートワークで差別化を頑張ろうとしているように見えるし、ヨーヨーリクリエーションは敢えて種類を絞る分に高品質と既存にないコンセプトを目指そうとしているように見える。各社それぞれの思想で頑張っている

 

Aliexpressで中華ヨーヨーも見てみたが、どうもあんまり多くない。というよりヨーヨー人口がそこまで多くない、というように見える。そもそも、世界的な有名ヨーヨーメーカーも過去いくつか立ち上がり休止したりしているようだ

中華な製品はだいたいそうなのだが、大きな市場/人気がある市場に対して強い。そして、Aliexpressにあるような製品は、良くも悪くも「熟れた製品の廉価バージョン」。家電で言えばアイリスオーヤマ的な立ち位置が多くなってしまう

 

ということで、面白ヘンテコヨーヨーを楽しむなら作るのがラクではないか?と思い至った

制作目標

で、実際作るとなると、まあ手元にあるスーパー便利な製造マシンは3Dプリンタなので、必然的に3Dプリンタヨーヨーとなる。少量量産は試したいし

あ、最近プリンタを更新しました。BambuLab P1S with AMSです。AMS目的だったので必然的にこれになりました。使い心地は…、素晴らしいですね。10年ぶりにメインプリンタを買い替えただけの差が体感出来ます。使い勝手の良いビルドプレートオート、キャリブレーション、AMSによるフィラメント切り替えとオートロード。特にフィラメント切り替えはずっと苦痛だったので、ここが自動化されたのは最高。

ただ、デカいね。AMSが更に場所を食うのでかなり無理矢理配置になってしまった



ヨーヨー性能評価

さて、世にあるバインド仕様ヨーヨーの性能は、だいたい回転力で強さが決まる、といっても良いでしょう(暴論)*3。異論は認めます。

回転力はざっくりスリープ時間に直結し、ざっくり回転モーメント量と工作精度です。つまり、

  • 回転外周に重さを乗せ/中心を軽くし
  • 重心ブレを減らす工作精度

であり、そうすると市場にあるヨーヨーは、性能が低い→高い順に

ぐらいの感じになるのではないでしょうか?多分諸説あります。

手持ちヨーヨーのうち、射出成形であるワンスターを振ってスリープさせると、ストリングを介して振動が伝わります。一方で、ポリカ切削であるスピーダホリックXXやアルミ切削のヘルベチカは、ヨーヨー近くのストリングをつまんで持ち上げても、振動が伝わりません。工作精度の高さが伺えます

ここで体感の差が大きいのがざっくり、プラ射出~プラ切削の間、プラ切削~金属切削の間です。個人的には、概ねプラ切削~金属切削の間の性能があると、ヨーヨーとしては高性能!って印象ですね

 

ターゲット性能

さて、プリンタで狙えるのはどこか、は考えておきます。所詮樹脂造形ですから、金属には及びません。対象回転させて削る切削加工ほどにきれいな真円精度は出ないでしょう

工作精度については、3Dプリンタはそれほど高いと個人的には思っていません。ざっくり0.5ミリぐらいが限界なんじゃないでしょうか?*5それでも普段の実用面では困りませんが、ヨーヨーでは厳しい可能性は十分にあります。

 

とすると、純粋にプリンタ樹脂のみで挑む場合、プラ射出~プラ切削の間ぐらいの性能じゃないでしょうか?

 

ただし、金属ウエイトを搭載したりする発展の余地はあります。そうすると、プラ切削未満のボディに金属リングが乗る…、プラ切削~プラ切削+金属リングぐらいの性能は目指せるかもしれません

もう一つメリットあります。射出成形や切削できできない形状、特に中空パーツが作れる点は強みになるかもしれません…*6

 

全体としては「性能の高さより、キワモノ的面白さ」を優先するコンセプトを取るつもりですが、第一目標はプラ射出成形のヨーヨー、つまりワンスターK2クリスタルあたりの性能を目指します

コアの設計

さて、目論見とは別にどう作るかは問題でした。メンテナンスパーツとして販売されている、サイズCベアリング、レスポンスパッドはそれで足りますが、アクスルやその軸受まわりは市販品がありません

…と思ったらありました。SGXシステム・スペーサーハブ。…が一旦忘れましょう。あとで教えてもらいましたが、YoYoMaker 3Dプリントヨーヨー制作軸パーツもありました。結構お値段するけど、気になるぜ

アクスルはワンスターを真似る

さて、ベースとしてはワンスターを参照しました。ワンスターを分解すると非常にシンプルです。左右ボディは同じ造形ですが、M4のボルトとナットを埋め込んでいます。それによって、ボルト頭にアクセスせずとも分解できる、いわゆるよくあるヨーヨーの構造と機構を実現しています。

これを真似て行きます。M4x25mmボルト、M4ナイロンナットを埋め込む方針にしました

 

PLA樹脂の柔らかさ/ABSの熱収縮問題

PLA樹脂は柔らかいです。特に問題なのが耐クリープ性が極端に低いことです。

フィラメント別の耐クリープ特性の比較 - いろいろ作るよ!の記事によると、ABSやポリカボと比べて半分しかありません。ので、ねじ込みによって強度が求められるヨーヨーの軸周辺には使いたくありません

一方で、ABSは熱収縮が大きく、特に大型造形ではひずみがちでした。そのうち使うならいいですが、とりあえず初回は避けたい

そしてBambuLab P1Sを買った時のオマケPLAが余っていました…

 

ということで複合構成にします。軸周辺をユニット化しABSで出力し、PLAのボディを合体させる方針です。またこうすることで、1セット200円ぐらいするレスポンスパッドを使い回せるメリットも出来ました

 

コア設計

初期の技術検証モデル。スリムサイズパッドのサイズがわからず、何度か作成した。熱収縮もあるのかちょっとサイズが怪しい

めちゃくちゃ試行錯誤した結果、やっと実用できたコア

FusionからDesignSpark Mechanicalへの移行を試してまして、パラメトリックからダイナミックCADになるのと合わせて思考法も操作もてんやわんやです。なんでスケッチ消えるの…

うん、だいたい理解してきたぞ…

 

雑に発注したM4x25mmネジの深さがあれば余裕だろうと思っていましたが、かなりギリギリ。というのもコアを分離したために、(コア本体(3mm) + コアとボディの噛み合わせ(2mm) + ボディの挟む厚み(2mm) ) x2 + サイズCベアリング(5mm)で19mm必要になり、結果ナットがギリギリです。

これでもコアバージョンとしてはv2

 

適当なボディをでっち上げる。ボディとコアは六角の噛み合わせによって接合している。

…けど冷静に考えたら、もっとラクな方法ありそうだなと思いつつ、実用困らないので一旦これで

完成直前。この前はコアの厚みが2mm余分にあり、ナットが締まらず全部作り直した。

3Dプリンタで普段絶対やらない95%インフィル設定…

一号機の完成

何とか出来た、一号機with死屍累々のゴミ箱。

他の手持ちヨーヨーとの比較。だいたいサイズ感は奥にいるヘルベチカを参照しているが、ほぼ同じになってしまった。実は幅はもっと小さく作る予定だった…詳しくは次記事で

一号機完成スペック

  • 重量53g
  • 幅45mm
  • 直径56mm
  • サイズCベアリング
  • スリムサイズパッド

振ってみると、かるいかるい軽すぎる!しかしちゃんとバインドヨーヨーだ。軽いせいかバインドすればスパスパ戻って来る。ブレはデカい。射出成形のワンスター並にストリングから揺れが伝わる。回転力も61gのワンスターを下回る感触。

トリックはローラーコースターは出来る、ジャーブル*7は…ギリギリできるかできないか怪しい…ぐらいのレベル

 

とりあえず一号機が出来た所で、この先ヨーヨーを作る技術の基礎と問題点の洗い出しができた。次記事では一号機で得た知見と次の構想をやっていこう

参考記事など

以下の記事を参考にして設計などしました。ありがとうございます

3Dプリンタでヨーヨーを作る(1)|もっちー

自作ヨーヨー作成の手引き|Yuto Ago

*1:そして色々ぶつけるけども…

*2:一方でロードバイクはエアロにその余地を見出してしまって、風洞実験に投資されてしまい価格上昇しているように見える。一方で非競技系グラベル、ツーリングやキャンピング系がは使い勝手で差別化をしていると見える

*3:形状、ベアリング仕様とかは脇においています。直接性能に関与しない、カラーや感触も脇へ

*4:振ったことがないので実感は不明

*5:樹脂の熱収縮もありますし、そもそもタイミングベルトの伸びは考慮せず、自宅搬入後の筐体のマニュアルキャリブレーションはしてませんし

*6:と思っていました。次記事に続く

*7:自分のヨーヨースキルの今の限界技。最近出来るようになりました!