禁断の果実Pimax 5k+

ViveCosmosが発売された昨今、どうでしょうか。Lighthouse対応は来年までお預けにやや未完成感の漂うCosmos、おま国のIndex、ViveProはもっともベターだけど面白さに掛ける安定感だしちょっと古いかな…ということで初代Vive勢としてはアップグレードパスに非常に悩ましいタイミングになってしまいましたよ。

 

そこであえてピーキーかつLighthouse対応、国内入手可能という要件を満たすPimax5k+を、my new gear…♪してしまったのでそのレビューを

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比較対象はVive初代(Pre-order仕様) + DX AudioStrap、VivePro(借り物)、OculusQuest(装着感など)です。

動作環境は

  • Core i7-9700K
  • 32GB
  • GeForce GTX1070(8GB) 

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ダイジェスト

総合性能

  • 高解像度、視野角全振りに間違いはない。革新的に広い。左右だけでなく上下にも5°ほど拡大しているが、これがかなり強く効き、空気感のある広さを感じさせる。ただし、視野が広がった分、解像度に取られるため、中心部解像度においてはViveProと同程度?気持ち細かいぐらいの差に留まる
  • ただし、パネルの色味は悪く、全体的に低コントラストで白くモヤが掛かった印象。明るい場面では比較的気にならないが、暗い場面ではやはり気になる
  • 他機能はAudioStrapなしのVive程度に留まる
  • GPU性能はやはり要求される。スタンドアロンゲーならそこまで困らないが、1070でVRChatするにはやはり画質を犠牲にするしかない。1070の場合、SteamVRの推奨SS値は30~50%程度
  • 左右のパネルが並行でないこと、視野が広すぎること由来の、アプリ側描画問題が起きることがある。これはアプリ側の問題のため、根本対応は難しい
  • Viveと比べると、ベースステーション、コントローラ、トラッカーの電源連動のようなBluetooth便利機能は使えなくなるため、単純な上位互換としては使いづらい
文句なしに良い
  • 広い視野角。メガネのフチを越えて世界が描画されるのはすごい。斜め向きながらBeatSaberができるし、VRChatでも横にいる人を感じれる
  • 液晶の格子/ドットの粒子感はかなり低い。「粒子感を見てやろう」という気を起こしたり、SteamVRの内部解像度*1が低いとドットがチラついてわかる程度
  • 軽い。初代ViveやQuestが重いだけともいうが、Pimaxの横長ボディの割には軽い
  • ケーブルが細くて軽量。ただし本体から脱着不能、長さがViveと比べると短い。とはいえ天井吊りとかしなければ問題ないレベル
まあ良い/思っていたほどではないが良い
  • 初期装備のヘッドバンドはVive付属品よりは良く、OculusQuest未満といった印象。初期パーツとしては悪くない。イヤホン運用はだるいが、ViveAudioStrapを移植する有志のモデルデータはあるので改善はできそう*2
  • 電源ボタンがある。不要かと思ったが、デバイス切り離せるので割と便利
  • SteamVRのSS値自動設定、Pitoolの広角設定で1070でも画質は犠牲になるものの、そこまで問題なく動く。画質は犠牲になるが…(後述)

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気になるが許せる
  • 液晶は白く、彩度は低い。コントラスト低め。暗い場面では白いモヤが掛かったような絵になるのは残念だが、色が狂っているわけではないので慣れるといえばそう
  • 視界周辺に歪みの癖がある。横方向に長いレンズのせいか、左右外側Viveの視野の外ぐらいで、特徴的な視界の歪みがあり、特に頭を振った時に気になる。が、これも1時間ぐらいで慣れる。メガネを買い替えたときのような気分
  • 顔のクッションはVive初期装備同様のスポンジ。とはいえ今ならいろんな交換パッドがあるので、交換するには困らないだろう
  • Vive*3やOculusQuest*4にある奥行き調整機能はない。リーフツアラーのレンズフレームでかなりギリギリで自分の場合は鼻の接触する。メガネでも同様、自分の場合はそれなりに入ったがやはり鼻に当たる。鼻へ掛かる圧が気になる場合は厚いクッションを選択する、専用インナーフレームを用意する*5といった手になりそう
  • バンドの都合、重心バランスはViveやQuest同様の前寄り。公式の追加アクセサリModularAudioStrap/VisionComfortの販売に期待
  • 独自のPiToolとSteamVRの連携に気を使う。この辺はWinMR寄りは簡単だが、素のSteamVRよりは難しい印象。設定値が多く、問題発生時に切り分けに悩む
  • PiToolのほんやくがあやしい所がある
対策が難しい/悪い
  • Viveと比べるとゴーグルの顔への密着度が高く、蒸れやすい
  • ベースステーション、コントローラ、トラッカーの自動オンオフ連動はできない。コントローラとトラッカーは時間切れでオフになるが、ベースステーションBT連動に頼っていた人*6はコンセント・スイッチを付けるなりの対応が必要
  • (いくつかのアプリでは)視野角180°オーバーの弊害が出る。オクルージョンカリングによるオブジェクトのチラツキが発生ししたり*7、カメラ方向に依存する実装?で左右目が違う絵になる*8。平行投影モードで対策可能だが、再起動が必要になる
  • SuperSamplingをいじると途端にGPU性能の壁が立ちはだかる。VRChatのミラーを恐れるようになる重さ
  • 広がった視界の分だけVR酔いしやすくなる
罠的なもの
  • Viveがつながってる状態だと、HMDの視界がブレることがある。USB含め外しておくべき
  • コントローラやトラッカーはPiToolからペアリングする

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初回インストールでPiToolがHMDを認識せず、あれこれ右往左往した以外は、割と順当に動いて拍子抜けした。Viveと共存させると、いろいろバグった挙動を見せたので、HMDは必ず1つだけ接続するのが良いようだ。

 

付属するベルトはこんな感じ。オーソドックスに左右と上のベルトを、マジックテープで締める形だが、ゴムバンドになってる部分が後頭部の二股下側のみになっているため、締付け感は少ない。悪くない感触だ。締めつけ感が少なくなった分、左右&頭頂バンドの調整はセンシティブになっている

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とはいえ、とりあえずDX AudioStrap(以下DAS)化した。ViveからAudioStrapを外して、3Dプリントで接合パーツを作って接合する。左右のヒンジはベルトが短くできるこれ頭頂ベルトの留め具はこれを使わせてもらった。ありがたい!誤家庭の3Dプリンタで吐いたあと塗装して色味合わせ

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フェイスパッド交換しつつ、DASを装着するとこう、非常にしっくりした見た目になる。が、Viveと根本的に取り付け位置が異なるせいか、大きな頭向きの寸法になってしまった

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装着してみると、なるほどVive感だ。少なくともベルトよりはカッチリとしたサポート感になった。イヤホンの面倒さもない。ただ、借りたViveProと比べるとやはり重心バランスや、おでこと後頭部で支える感じは乏しく、顔のホホで支えてる感じは残る。この辺の旧式感は否めない。

公式から予定されているModular Audio Strapアクセサリは写真みるかぎり、VivePro風になっているので期待したいところだ。おでこサポートのVisionComfortKitも別になっていてトータル$170掛かる、となるとうーん、重要パーツを別売にされているというかViveProと比べると不完全状態でリリースされている印象は否めない

 

 

SS値をいじって遊ぶ

SS値、SuperSampling値とは。

【VR】内部解像度 (Super Sampling) で VR 体験はどれだけ変わるのか?この記事が詳しい。ざっくり言うと、HMDへ投射する前段階として内部レンダリングをしていて、そこの解像度の大きさ/比率を設定するパラメータだ。ざっくり「100%で中心部解像度がHMDに対して1:1比程度になり、小さいほど軽量&低解像度、大きいほど高負荷&高解像度」だ。HMDごとにパネル解像度が異なることに注意

体感では、50%を下回ると低解像度のジャリジャリ感が厳しい。50%~120%あたりは値に合わせて解像度感が高まる。120%以上ではイマイチ区別がつかなくなり、200%以上は実用性がない、という感触。

何も設定してないSteamVRであれば、GPUHMDの組み合わせから勝手に決定される。一時期「ViveProを買うなら、GPUを強くすると解像度感が上がる」という噂があったが恐らくこの自動設定されるSS値が理由。手動で設定することもできる。

Vive/ProとGPUの組み合わせにおけるSS値はここが参考になる。例えば自分の以前の環境、1070+Viveなら132%のように

 

手動設定はSteamVRでは2箇所あり、アプリケーションと動画*9のそれぞれにあり、アプリケーションならアプリごとに、動画だと全体設定ができ、最終的にそれの掛け算で機能する。またアプリによっては、独自に内部解像度設定を持つもの*10もあり、恐らくSteamVRのSS値に更に掛け算する形で機能すると思われる

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1070+Pimax5k+の組み合わせでは44%が推奨されたものの、100%で上書きしてる図。かなりブーストしてやるとキレイにはなるがfpsが犠牲になってガタガタになる。パネルのdotbydot…ではないけど100%出せないのは悲しくない?

 

VRChatへ戻るとやはりGPU性能がつらい。BeatSaberとかGoogleEarthVRとか、他であればそんな気にならないのだけど、VRChatはやはりヤバい。SS値30%~40%ぐらいなら安定するのだけれども、それでもローカルミラーが怖くなってしまった。比較的重いJapaneland Skyの雲シェーダーでは15fpsを下回るような場面も出てきた。5kの解像度を活かせない…力がほしい…

力(SS値)が欲しいか…(そんなものはない。現実は無慈悲である)

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動作環境を更新した

  • Core i7-9700K
  • 32GB
  • GeForce GTX1070(8GB) → RTX2080super(8GB) 

…あれ?それほど早くなってない?いやもちろん1070よりは劇的にマシにはなったのだけど、「すっげー快適!!さすが2080superさんやで!」というほど早くないというか。SteamVRの推奨SS値は80%程度まで上がったものの、100%を達成できないのはこの機材投資に対してちょっと悲しくないですか?私、能力は平均上のつよつよなPCって言ったよね?Vive+1070よりPimax5k+2080sの方が体感で性能が出てないような…?

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2080superを持ってしても推奨SS値86%

 

ということでちょっとざっくり試算してみる。

HMDピクセル

  • Vive 2160x1200
  • RiftS 2560x1440 = Vive比1.42倍
  • VivePro,Quest,Index 2880x1600 =Vive比1.78倍
  • ViveCosmos 2880×1700 =Vive比1.89倍
  • Pimax5k+ 5120×1440 =Vive比2.84倍

一方、GPUのベンチスコアを見ると…、2080superは1070のわずかに1.6倍程度のスコアしかない!えっマジ!? そりゃ性能不足になるわけだ。面積2.84倍の要求に、1.6倍のパワーしか供給できてないとすると、総力的には44%減である。しかもVRAM容量は変化してない

これが2080Tiになると、シェーダーコア数が2080superの1.3倍になり、1070比で約2.0倍になる。えっ、2倍しかならないの!? つらい…、いやまあ不足していると言われるVRAMが8GBから11GBに増えるならTi化は有効なのかもしれないが…。

一応この2080super、2080Tiの先にRTX TITANがいるが、シェーダーコア数はほとんど増えず、VRAMが増えるだけであり、それでもって価格ははるか彼方へ飛んでいってしまう。まったく実用的ではない。VRChatは無料。どうして…

 

…うーん仕方ないので忘れよう。PCはたしかにつよつよになったはずなんだ。当分このままで

Pitoolの設定あれこれ

Pimaxには設定ツール、というかSteamVRと連携するシステムツールPitoolがあり、割と設定値が多い。

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スマートフレーム

OculusやViveがやってる「フレーム描画が間に合わなかった時に、前フレームの絵でなんとか頑張る」やつのPimax版

固定注視点レンダリング

FixedForveatedRenderingのこと。OculusQuestがやってるような、周辺視野部分だけ解像度を下げてレンダリングコストを下げる機能。解像度を下げるといっても滑らかに下がるわけではないため、解像度の段差が見えてしまう、周辺視野がジャリジャリした解像度になる違和感は多少あるものの、わりとちゃんと機能している気はする。パフォーマンス、バランス、画質優先の3段階設定。設定が即反映されるが、アプリ起動中に変更するとクラッシュ要因か。

機能としては面白く、視界が変化するのは面白いのだけど、負荷削減効果についてはいまいちピンと来なかった。SS値を下げた方が明確に性能影響が出る感触

この機能は、RTX20x0系のみ有効になるらしく、他GPUではそもそも項目がないらしい。1070の時にはなく、突然生えたように見えたので驚いた。

並行投影対応

要SteamVR再起動。Pimaxは他のHMDと違い、左右の目が並行でない(液晶パネルがPimaxボディの見た目の通り斜めに設置されている)ため、左右でガチャ目になってしまうアプリがある*11。その対策なのだが、かなり残念な画質になり立体感もなんだか変になる。ので実用的かいうと、無いよりはマシだが微妙な感じだった。

視野角

文字通り、即座適用される。Pimaxの売り広視野角を削るモードといえばそうなのだが、視界端でモノがオクルージョンでチラついて邪魔、少しでもGPUパワーをセーブしたい時に使える。広い、標準、狭いの3段階で、標準でもメガネより広い範囲をカバーするので普段使いには標準が良い感じだ。狭めた分だけGPUパワー要求も減ると思われる

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 クオリティ

良くわからない。恐らくSS値の倍率設定と思われる?

ざっとこんな感じ?良くわからないというか、公式に設定の説明がない?

いかがでしたか?

まとめは前述の通り、Pimax5k+は視野角に全部を注ぎ込んでおり、それ以外のHMD性能はViveCE(AudioStrapなし)前後の性能をイメージしてもらえればだいたい良い。この視野角はたしかに禁断の果実とも言うべき「広さ」を提供してくれる。この広さの味はたしかにすごい。既存のHMDが狭い双眼鏡か何か見えてくるぐらいのインパクトはある。

ただしこの拡大したパネルを十分に支えられるGPUは、特にVRChatの必要性能に関しては現実に存在しないオーパーツだ。

 

比較対象にViveProを借りて装着してみたり、また店頭デモでCosmosも触れてみたが、性能バランス面ではこちらが間違いなく良い。特に装着感、頭に載せた時の安定性や顔に重量が乗らない感触はVive+AudioStrapとは別次元の快適性になっていて、スペックに出にくい点でViveの後継機と言わせるだけの出来を感じた。普通に買うならそっちだろう*12

 

そういう総合的な快適性にはPimax5k+は到達しておらず、そういう意味ではOculusDK2の後継機というかDeveloperKit感触が残る。無骨さと、足りないGPU性能、それでも広い視野角が欲しいか、どうか

*1:SuperSampling設定、デフォルトではGPU性能に従って大小する。SteamVRの設定で手指定もできるし、Beatsaberなどではアプリ側にも設定値がある

*2:3Dプリンタ/プリントサービスに手が届けば

*3:ヘッドバンド付け根を引っ張って回すとHMD全体がせり出してメガネが入れやすくなる機能

*4:簡易版。スペーサーが付属し、必要に応じてクッションと本体の間に挟むことでメガネが入れやすくなる

*5:ユーザ数的に言って自作になりそう、難易度たけえ…

*6:わたしです( ^o^)ノ

*7:VRChatやSteamHomeでは分かりやすく起きる。気になるが視界ギリギリ端で発生するだけで致命的ではない

*8:RezInfiniteなど。こちらは致命的に遊べない

*9:Videoの誤訳っぽい。正しく訳すならそのままビデオ(オーディオの項目があるので)か、映像とすべき

*10:BeatSaberなど

*11:例えばRez Infiniteとか

*12:Cosmosのトラッキング性能はまだ残念な感触だったが…、という意味では今HMDを買うのは本当に悩ましい時期だ。とはいえ恐らく、OculusRiftS/ViveCosmos/ValveIndexと今世代が揃ってしまったし2,3年は、PCVRは当分このままの可能性は高そうと踏んでいる