深センAnet社のDIYプリンタキット、A6を買って組み立てたのでざっとレビューしたい
結論
- 良かった
- 圧倒的コストパフォーマンス。3万円でお釣り来るぞ
- 液晶は便利。スタンドアロンで動作し、動作チェック、ステータス表示、出力操作、出力中でも調整ができる。プログレスバーもある
- まずまずの出力品質
- よくあるReprapなのでソフトは慣れたものが使える
- 悪かった
購入&開梱
AliexpressのMonda Storeで購入、28k円ほど。Fedexで2週間程度で到着。発送元がAnet社だったので直送っぽい
10kgぐらいのデカイ箱で届くので覚悟すること。
マニュアルと付属ソフト類はUSBメモリ… というよりMicroSDでパッケージに入っていて他に紙はない、というより紙書類は一切ない。
マニュアル&ソフトは英中が入っている。pdfマニュアルが3種(組立、プリントソフト、FAQ)、STLのサンプル、GCODEのサンプル等
開梱したら、マニュアルを元にパーツリストを確認したい。工具も一通り、フィラメントもテスト用とは別に500gPLAが入っていて、この辺の配慮はバッチリ
組み立て
組立マニュアルは荒削りなタミヤキットというか、カタコト英語が埋め込まれたレゴというか、図が多く、物理的な組立で迷うことはない。良く出来てる。とはいえ、Guide Rod/Leading Rod、BackupPlate/Bracketと用語が統一されてない問題はある
本体メインパーツはカットされたアクリルパネル。保護シートを剥がす必要があるが、どうせ見た目だけなので剥がさなければ短縮できるだろう
マニュアルは一部ネジ長表記が間違っているが、予想付く範囲の些細な問題だ。ナットの中にはネジがちゃんと締まらないモノがあるが、幸い予備は多いのでクソナットは捨ててよい
X軸駆動ベルトはインシュロックで固定していて、え?こんなんでいいの?とDIY的な驚き。XY軸の駆動ベルトテンションは高すぎると駆動が渋く、ゆるいとプリント形状が波打つ。直すのは比較的カンタンなので、ベルトは多少長めに切っておくのが良いだろう。ベルトは金属ワイヤーが入ってるので、普通のハサミで切ると切れないことはないがハサミが欠ける
Z軸のリミットスイッチの取り付け工程がマニュアルから漏れているので、以下の動画を確認して取り付ける。14:45あたり
配線
だいたいマニュアルに従うが、前述の通り電源に気を付けること。マニュアルと公式動画では「左がマイナス、右がプラス」となっているが、基板のシルク印刷では「左がプラス、右がマイナス」。念のため基板のパターンを確認して((電解コンデンサの極性からテスターで辿った繋いだが、基板のシルク印刷「左がプラス、右がマイナス」が正しいようだ。この辺はロットによるのかもしれない(他にもマニュアルとの差異はある)。
組立動画には「動画通りに組み立てたら、基板が煙を吹いた」というコメントもあり、この辺をミスったユーザなのかもしれない。電源を入れる前にはじっくり確認し、コンセントをすぐ抜ける状態で、周りを整理し通電したいところ
組み上がってから気づいたが、動画にはツイストカバーの使い方、推奨されるケーブリングが載っているのでうまい具合に仕上げたい場合は参照したい
ベッドのキャリブレーション
この画面が出るだけで一安心。お使いの電源系統は正常です
稀にモーターが暴走することがあるが、そういう時は落ち着いてノブの下のリセットボタンを押すか電プチをすること。
事前にマスキングテープのような保護シートがベッドに貼ってあるが、自分の場合は剥がしてタミヤや3Mのマスキングテープを使用した。
メニュー→Position→AutoHomeで、エクストルーダを(0,0,0)に移動する。次にPosition→Move Axis→1mm→XまたはYでエクストルーダをベッド上に移動する。ベッドと衝突するようなら、事前にベッド四つ角のネジを締め、ベッド位置を下げておく。四つ角近くまでエクストルーダを移動させ、ベッドとノズルの間が紙カード一枚分ぐらいになるようベッドのネジ4つをいじって調整する。ボード穴がねじ切ってあるのに蝶ネジが付いてるあたりがガバ設計を感じる
Z軸を+50mmほど移動させたら、メニュー→Prepare→Preheat PLAで予熱を開始する。パネルでエクストルーダが200℃に到達したのを確認したら、メニュー→Prepare→Move Axis→1mm→Extruderでフィラメント送りギアを動かしつつ、エクストルーダにフィラメントをセットする
にょろりしたら準備完了
とりあえずテストしたい場合は、付属のmicroSDのテストデータから、testfileGcodeからBoxあたりをプリントすると良い。メニュー→Print from SDでできる
ソフト
ソフトはいわゆるReprap系の経験があればそれで良い。
マニュアルではCuraをオススメしているが、付属のOperationInstructionは順序が前後している上に図がズレている。
わりと丁寧に解説しているのに図がズレズレで読めない。ので自分は読まなかった。ぶっちゃけCuraの説明(=Slic3rの設定説明)なので、Slic3rのマニュアルを読めば良い。ソフト自体も最新版を公式から落とした方が良いだろう
PCを繋いでのオンラインプリントもできるようだが、自分は今のところSDカードにGCodeを入れてのオフラインプリントを使っている。
Slic3r - G-code generator for 3D printers
Slic3rにSTLのモデルを読み込ませて、Gcodeを出力してSDカードに書き込み、SDをプリンタに指してPrint from SD、という流れだ
設定としてはとりあえず
- PrintSetting
- LayerHeight 0.25mm
- FilamentSetting
- Fillament
- Diameter 1.75mm
- Temperature Extruder FirstLayer:215 Other:210
- Bed FirstLayer:50 Other:30
- PrinterSetting
- G-code Flavor: RepRap(Marlin/Sprinter/Reprier)
- BedShape Rectangular Size:200x200 Origin-10x-10
とした。
LayerHeightはスピード重視なら0.30ぐらいでもよいかも。
Tempは付属のPLAフィラメントの流動性が高すぎる気がしたのでちょっと下げたが、抵抗が増えすぎたようでエクストルーダ送りギアが空転することがあったので良くないようだ。結局元に戻した。この辺はフィラメントごとに適度にいじっていく必要があるだろう
PLAフィラメントの特性は「熱ヒケが少ない」「温度に対して粘性が敏感。ちょっと温度を上げるとすぐタレる」「長時間高温に晒すと焦げる」あたりと思っている。
総じてSlic3rの設定デフォルトで動くようになっていると感じた。ベッドサイズ、フィラメントの経(1.75mmと3mmが大半の様子)、G-code Flavorあたりをちゃんと設定してやるだけでだいたい大丈夫だろう
A6のベッドはAutoHome時が(0,0,0)のようなので、それに合わせてBedShapeのオフセットを適当に設定した。がこの辺は大きな造形の時に気になるだけなので、小さいものを出力するなら後回しでも良い
Tipsとか
- SDカードは電源切らずに抜き差しできる。メニュー→Change SD Cardで再読込できる
- ConfigurationからPreheat時の温度設定を変更できる
- Controlからエクストルーダの温度をプリント中でも変更できる。2,3℃の変更をするのに最適
- 付属のフィラメントリールホルダーは回転抵抗がそれなりにある。フィラメント引き込みが失敗しないよう、軸受に変える等した方が良さそう
- Thingiverseを見ると、A6用追加パーツを作ってるやSlic3r設定作ってる人もちらほら
- スクレイパーがあると、ベッドから出力品を剥がす時に便利だ
まとめ
デカイのが吐けるのは良い
いい買い物だった。とはいえやはりハードルが高いし、そうでなくても組立の手間が尋常じゃない。休日をセットで潰す覚悟がいる。組立自体はタミヤ工作セット程度の技術でできると思う一方で、マニュアルのミスに気づくには相応の察する能力がいるだろう。キャリブレーションとスライサーのパラメータをいじくるには、3Dプリンタ心得がほしいところだ。そうい意味でチャレンジしがいのあるキットだった。
3Dプリンタが欲しくてたまらない、労力を惜しまない人には最高の買い物になると思う。